2024年11月に特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(以下「フリーランス法」といいます。)が施行され、2025年6月に初めてフリーランス法違反に対する勧告がされました。それ以降、2026年2月末までの間に、8件の勧告が出されています。
また、公正取引委員会の2024年度の年次報告(https://www.jftc.go.jp/soshiki/nenpou/r6.html)によると、同年度に着手したフリーランス法違反被疑事件は137件、指導を行った件数54件とのことであり、活発に調査が行われています。
本稿では、2025年度の勧告事案から3件を取り上げて説明します。
(光文社 (令和7年6月17日)株式会社光文社に対する勧告について | 公正取引委員会
小学館 (令和7年6月17日)株式会社小学館に対する勧告について | 公正取引委員会)
2025年6月17日、公正取引委員会が初めてフリーランス法違反に対して勧告を行ったのが、出版社である光文社及び小学館に対する事案です。この2つは別の事案ではありますが、違反事実及び勧告の内容が共通するため、まとめて説明します。
(1)事案の概要
光文社及び小学館は、フリーランス法の定めるフリーランス(個人であって従業員を使用しないもの、又は、法人であって、1名の代表者以外に他の役員がなく、かつ、従業員を使用しないもの)に対し、自らが出版する月刊誌、週刊誌(及び、光文社においては文庫本等)に関する原稿、写真データ、イラスト等の作成、ヘアメイクの実施(及び、光文社においては撮影道具等の手配)等を委託(以下、本「2」において「本件業務委託」といいます。)しています。
光文社及び小学館に対して、フリーランス法違反が認定されたのは、以下の2つの行為です。
①光文社は、2024年11月1日(フリーランス法施行日)から2025年2月27日までの間、フリーランス31名に対し、また、小学館は、2024年12月1日から同月31日までの間、フリーランス191名に対し、本件業務委託をした際に、直ちに、給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項(フリーランス法3条1項に定める明示事項)を、書面又は電磁的方法により、当該フリーランスに対して明示しなかった。
②光文社及び小学館は、上記の期間に当該フリーランスに対して本件業務委託をした際に、直ちに、報酬の支払期日を当該フリーランスに明示しておらず、当該フリーランスの給付を受領した日又は当該フリーランスから役務の提供を受けた日までに、報酬を支払わなかった。
(2)勧告の概要
光文社及び小学館に対する勧告の概要は以下のとおりです。
①次の事項を取締役会の決議により確認すること
・前記(1)①の行為が、フリーランス法3条1項の規定に違反するものであること
・今後、フリーランスに業務委託をした場合に、直ちに、明示事項を、書面又は電磁的方法により当該フリーランスに対し明示すること
・前記(1)②の行為が、フリーランス法4条5項の規定に違反するものであること
・今後、フリーランスに業務委託をした場合に、当該フリーランスに対し、フリーランス法4条1項の規定により定められた支払期日までに報酬を支払うこと
②2024年11月1日(フリーランス法施行日)から2025年6月17日(勧告日)までの間に、本件業務委託の内容と同種又は類似の内容の業務委託をしたフリーランスとの取引について、フリーランス法3条1項及び同法4条5項の観点から問題なかったかを調査し、問題が認められた場合には、フリーランスとの取引の適正化のために必要な措置を講ずること
③以下について、自社の役員及び従業員に対するフリーランス法の研修を行うなど社内体制の整備のために必要な措置を講ずること
・今後、フリーランスに業務委託をした場合に、直ちに、明示事項を、書面又は電磁的方法により当該フリーランスに対し明示すること
・今後、フリーランスに業務委託をした場合に、当該フリーランスに対し、フリーランス法4条1項の規定により定められた支払期日までに報酬を支払うこと
④上記①から③に基づいて採った措置を自社の役員及び従業員に周知徹底すること
⑤上記①から④に基づいて採った措置を取引先のフリーランスに通知すること
⑥上記①から⑤までに基づいて採った措置を速やかに公正取引委員会に報告すること
(3)解説
前記(1)①の行為は取引条件の明示義務違反(フリーランス法3条1項)、②の行為は期日における報酬支払義務違反(同法4条5項)に当たります。
期日における報酬支払義務について、支払期日を定めなかった場合には、物品等を受領した日又は役務提供を受けた日が支払期日となることに注意が必要です。
支払期日は明示事項の1つであるところ、光文社及び小学館は、明示義務を果たしておらず、別途支払期日を定めてもいなかったようであり、フリーランスの給付を受領した日又はフリーランスから役務の提供を受けた日に、報酬を支払わなくてはなりません。通常、給付を受領した日又は役務の提供を受けた日の当日に報酬を支払っていることはないでしょうから、明示義務違反があると、別途支払期日を定めていない限り、報酬支払義務にも違反することになります。
フリーランス法違反に対する勧告の内容は、おおむね取適法(旧下請法)違反に対する勧告と共通しますが、前記(2)②のような類似違反事例の調査を行わせるのは、フリーランス法違反に対する勧告に特徴的なものといえます。