(5)買いたたき
買いたたきとは、通常支払われる対価に比べて著しく低い額を不当に定めることをいいます。通常支払われる対価とは、同種・類似の給付について一般的に支払われる価格のことです。買いたたきに該当するかは、次のような要素に鑑み総合的に判断します。
●報酬の額について十分な協議を行ったか
●同種業務の他の受注者より報酬が安いなど差別的な価格でないか
●「通常支払われる対価」との乖離状況
●原材料費、エネルギーコスト、人件費等の価格動向
例えば、フリーランスから原材料費等のコストの高騰を理由に単価の引上げを求められたにもかかわらず、十分協議することなく、一方的に単価を据え置くことにより、通常の対価を大幅に下回る報酬の額を定める場合が該当します。特に近年はコストの上昇が著しく、フリーランスと十分協議をせずに従前と同じ報酬に据え置くことは、買いたたきとなるおそれがあります。
(6)購入・利用強制
購入・利用強制とは、フリーランスに対し、指定する製品の購入又は役務の利用を強制することをいいます。指定する製品は、発注事業者の販売する製品・役務に限りません。物品の購入又は役務の利用を取引の条件とする場合や、購入又は利用しないことに対して不利益を与える場合に限らず、事実上、フリーランスに購入等を余儀なくさせていると認められる場合は、「強制」に該当します。
例えば、発注事業者が、自社の取引先の映画のチケットを、フリーランスごとに目標枚数を定めて、購入させる場合です。
(7)不当な経済上の利益の提供要請
不当な経済上の利益の提供要請とは、フリーランスに対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を不当に提供させることをいいます。経済上の利益とは、報酬の支払とは無関係に行われる、金銭・物品の提供、労務の提供等が広く該当します。経済上の利益を提供することにより、フリーランスにそれを上回る利益が直接生じる場合で、フリーランスが自由な意思により提供する場合には、「不当」とはいえず、違反になりません。
例えば、発注事業者である運送会社が、委託内容には荷積み作業は含まれていないのに、フリーランスに無償で荷積み作業をさせることは、不当な経済上の利益の提供要請に当たります。
(8)不当な給付内容の変更・やり直し
不当な給付内容の変更・やり直しとは、フリーランスの責めに帰すべき理由がないのに、不当に給付内容を変更し、又は、受領後にやり直しをさせることをいいます。「フリーランスの責めに帰すべき理由」があるとしてやり直しさせることができるのは、給付の内容が委託内容に適合しない場合です。発注事業者が追加費用を負担の上、フリーランスに変更を依頼したりやり直しさせたりする場合には、「不当」とはいえず、違反にはなりません。
例えば、フリーランスが仕様の明確化を求めたにもかかわらず明確にしないまま作業させ、フリーランスが納入した情報成果物に対して、仕様に適合していないとして無償でやり直しをさせることは、不当なやり直しに当たります。
以上のとおり、特定の発注事業者には、7つの禁止行為が設けられています。これらの禁止行為はいずれも、下請法でも禁止行為として規定されているものです。下請法にはこれ以外にも禁止行為がありますが、上記の7つの禁止行為については下請法との違いはないため、下請法上の親事業者は、対フリーランスとの取引でも同様に遵守すれば足ります。
(おわり)