フリーランス法の解説explanation

フリーランス法違反に当たる具体的事例(その2)

2025.3.21

3 株式会社KADOKAWA及び株式会社KADOKAWA LifeDesignに対する勧告事例
(https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2024/nov/241112_kadokawa.html)

(1)事案の概要
 資本金5000万円超の株式会社KADOKAWA(以下「KADOKAWA」といいます。)は、雑誌「レタスクラブ」の発行事業(以下「レタスクラブ事業」といいます。)において、受託事業者に対し、レタスクラブの記事作成及び写真撮影業務を委託していました。レタスクラブ事業における販売収入や広告収入が減少傾向にある中、資材費、輸送費等のコストも上昇しており、KADOKAWAは、自社の収益改善を図るため、発注単価を改定する旨を記載した「原稿料改定のお知らせ」と題する文書を受託事業者に通知し、受託事業者と十分な協議を行うことなく、発注単価を従前の単価から約6.3%~約39.4%引き下げることを一方的に決定し、受託事業者26名に対し、令和5年4月発売号以降の委託業務について、当該引下げ後の単価を適用しました。
 令和6年4月1日、KADOKAWAは資本金5000万円超の株式会社KADOKAWA LifeDesign(以下「LifeDesign」といいます。)にレタスクラブ事業を承継しました。LifeDesignは、同じく記事作成及び写真撮影業務を受託事業者に委託しているところ、受託事業者と十分な協議を行うことなく、KADOKAWAが事業承継前に一方的に決定した単価をそのまま適用していました。
 令和6年11月12日、公正取引委員会は、KADOKAWA及びLifeDesignの行為が買いたたきの禁止(下請法4条1項5号)に該当し、下請法に違反すると認定し、勧告を行いました。LifeDesignは、自ら価格を引き下げたわけではありませんが、KADOKAWAが事業承継前に決定した単価をそのまま適用していたことをもって買いたたきと認定されたことにも留意が必要です。

(2)フリーランス法を適用した場合
 本事案の受託事業者に含まれる「個人」はフリーランスに該当すると考えられ、法人の中に1名の代表者のみで従業員のいない法人が含まれていれば、当該法人もフリーランスに該当します。
 また、KADOKAWA及びLifeDesignが発注する取引は、記事作成及び写真撮影業務です。記事作成は情報成果物の作成委託に、写真撮影業務は役務の提供委託に該当します。
 以上のことから、KADOKAWA及びLifeDesignとフリーランスとの間の取引は、フリーランス法の適用対象です。
 次に、KADOKAWA及びLifeDesignが行った買いたたきは、フリーランス法上も禁止行為です。
 したがって、本事案のうち、フリーランスとの間の取引については、フリーランス法違反にも当たります。
 本事案に対して公正取引委員会が勧告を行ったのはフリーランス法の施行後であるため、フリーランスとの間の取引についてはフリーランス法を適用することも可能です。もっとも、受託事業者の中にはフリーランスに該当しない、従業員を使用する法人も含まれていたと思われ、当該法人との間の取引にはフリーランス法を適用することはできないため、別途下請法を適用する必要があります。公正取引委員会は、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律と独占禁止法及び下請法との適用関係等の考え方」において、フリーランス法と下請法のいずれにも違反する行為を行っている事業者が、下請法のみに違反する行為も行っている場合、それらの行為全体について下請法を適用するのが適当だと公正取引委員会が考えるときには、フリーランス法と下請法のいずれにも違反する行為についても下請法に基づき勧告することがある旨を示しています。本事案では、発注事業者はフリーランス法と下請法のいずれにも違反する行為を行っているものの、フリーランスには該当しない法人との間の行為は下請法にのみ違反する行為であるため、公正取引委員会の判断により、フリーランスとの間の取引も含め、下請法に基づく勧告を行ったと考えられます。

4 おわりに

 今後も、発注事業者が、フリーランス法にも下請法にも違反する行為をしているものの、フリーランスには該当しない下請事業者との間の行為が含まれている場合には、下請法が適用される可能性が高いと思われます。もっとも、フリーランス法しか適用されない取引(自ら使用する役務の提供委託)や、フリーランスとの間でのみ違反行為を行っているような場合には、フリーランス法が適用されると考えられます。

(おわり)